「秒速5センチメートル」

ef関連で友人から話を聞いたので見てみた。

普段マンガ文化にばかり触れている私たちが何気なく口にする「絵がすごい」は、それだけで「人物の絵が綺麗」という意味に無意識に受け取ってしまうけれど、ほんとうの意味で「絵がすごい」人っていうのは、背景とか無機物とか、そういう人物でないものを描写する能力が圧倒的に高い人のことだと思う。

これと一緒に「ほしのこえ」も見たのだけれど、私が新海誠の絵で一番胸を打たれるのは教室の絵。全体的に暗くて、窓からオレンジの光がピカーッてさしてきて、机や床に斜めになった陰が落ちてて、日のあたってる机の上だけ妙にギラついてて・・・みたいな、あの教室のちょっと退廃的とも取れる雰囲気がすごく伝わってくる。私はもう大学も卒業しようという年なので、ああいう描写を見ると涙が出そうになります。昔を思い出す。

個人的感情抜きですごいと思ったのは、2話に出てくる空の絵。「ほしのこえ」にもあったけど、深海さんは宇宙好きなのでしょうか。線や円の使い方、色そのものの選び方とかそのコントラストとか、アニメの綺麗さみたいのを優に超えていると思う。芸術だよね。遠近感の出し方とか個性的だと思う。ただ空の向こう、遠くです。って言うだけじゃなくて、その空の遠く、という位置にまたひとつの世界が広がっていて、それは現実世界と離れてそれとして独立しているような。絵を言葉で説明するのは難しいですね。

あと個人的に、道路にあたってる光の描写が秀逸だと思った。まあ何かにつけて光と影の描写はすごいんだけど、主人公たちの歩く道の光と影が、ただオレンジとグレーだけじゃなくて、ピンクとか乗っかってるのがすごい。

っていうかあれだよね。描くときに「常識的に考えてその場所にあるべき色」でない色をそこに置いていくやり方が、アニメ的ではなくて芸術的なんだと思う。そういうのって美術の授業とかやるとかなり最初のほうに教わることだし(特に油絵とか選ぶと)、全然まったく特殊な技法じゃない。でもアニメでは普通使われないような気がする。でもアニメでそれやっちゃうのが新海!



お話のほうは、1話>2話>3話 だと思う・・・。
1話はよかった。電車が遅れてて会えないってだけなのに、飽きなかったし。最後泣いたし。
全体としての結末も私はああいうの好きだからいいと思うけど、なんか、こう、魅せ方が・・・もうちょっとほかに方法あったんじゃないかな・・・とか・・・・。
映画なんだから全体の計画立てて作ったに決まってるんだけど、これだと1話2話でめいっぱいやって、3話は時間足りなくなっちゃったから駆け足で片付けちゃった、みたいに見えてしまう。残念。


でもまぁ絵を見るためだけに見る価値はあると思う。
DVD買おうかな。ニコニコの画質にあの絵はもったいない。